南の猫の新西蘭雑記

日本も結構好きなのですが、根っこがこっちに深いです。

「都市 (ハヤカワ文庫 SF 205)」と「シリウス (ハヤカワ文庫 SF 191)」 犬SF

言わずもがなの猫好きなので、猫が出てくる本は、飛びついてしまいます。SF作家にも猫好きは多々いまして、ハインライン先生もその一人。愛読書「夏への扉」の、主人公の猫、ピート君の格好いい事。動物は皆、好きですから、犬を避けている訳ではありませんが、やはり、猫が専行してしまいます。

そんな、偏ったnekoの読書遍歴の中で、光る犬SF(こんなカテゴリー、ありませんて)がこれ、「都市」。オムニバス形式で、短編が積み重なって、壮大な人類と犬類の歴史が明らかになってきます。賢くなった犬たちが(人工的に知能を促進されて)静かに台頭していく中、人類はゆっくりと停滞していきます。派手な宇宙戦も、サイバースペースも、恐ろしい宇宙人もでてきませんが、読み応えは十分。ここにも、又、人類の進退を見届けねばならない、長生きの哀愁のロボットがでてきます。地球上で人類と犬類の狭間で、最終的にこのロボットが選ぶ道は切ないです。

「都市」はかなり古いですが、もっと古いのが「シリウス」。これは、やはり、人工的に知能を促進された、唯一の成功作である、孤独な犬、シリウスの一生。この犬の心理と、一緒に育てられた、シリウスの半身とも言える、女性の半生が、傍観者である語り手によって、淡々と綴られます。思わず、引き込まれますが、かなり、辛かった。人の勝手で知識の世界に目覚めさせられ、結局人世界に受け入れられず、犬世界にも戻れず、自分の中の知性と獣性のギャップに苦しむシリウス。哀れ過ぎます。

人類の最高の友といわれる犬たち。いつまでも、平和に共存していきたい物です。犬に限らず、人間同士もですね。