南の猫の新西蘭雑記

日本も結構好きなのですが、根っこがこっちに深いです。

ハイペリオン 大傑作長編シリーズの第一部

ハイペリオン〈上〉 (ハヤカワ文庫SF) ハイペリオン〈下〉 (ハヤカワ文庫SF) Hyperion (Hyperion Cantos)

火星SFはちょっと休憩。真打ちの書きたかった題名が見つからなくて、困っていたら、思い出しました。主人の友達に貸し出してしまった。こればかりは、本を手元において、じっくり書きたい。と、いう事で、こちらが先。


全部で四本の長編です。単行本だと、この一編だけで二冊になってしまってますが、読み出したら気になりません。SF小物はありとあらゆるアイディアを全部詰め込んだのではないかと、思えるサービス振り。本筋がしっかりしているので、まさに、しっかりと大地に根を張って、たわわに実を成らせた上に、まだ、葉も青々と茂らせている大木のような小説です。花も咲いていたりして。


この大サーガの幕開けは、恐竜狩りのできる沼と森に覆われた名もない惑星。自由に形を変えられる真っ黒な宇宙船がバルコニーをせり出させて、その上で本物のピアノを奏でる領事殿。まぁ、なんて優雅な休暇でしょう、と、思う間もなくチャイム。これが超光速通信。ハスキーな声の主は、二百もの惑星を統括する一大連邦の行政府最高運営責任者(苦しいなぁ、こんな肩書き、口にしている間に非常事態が収拾してしまいそう、英語だと、senate CEO)、稀代の政治家、マイナ・グラッドストーン。彼女の口から、いきなり、世界が広がります。題名の「ハイペリオン」は惑星の名前。謎の大遺跡があります。その遺跡、時間に影響を及ぼす<時間の墓標>が動き始め、その遺跡から伝説の殺伐マシンが現実となって出没し人狩りを始め、連邦の宿敵、宇宙の蛮族<放逐者(Ouster)>の船団が迫りつつあり。これが、単なる背景、プロローグ。


この一編は、<時間の墓標>にたどり着こうとする、選ばれた巡礼者たち、七人の身の上話です。キリスト教司祭(実はもう一人も)、退役した伝説の軍人(二メートルの巨人、格好いい)、ベストセラー作家の詩人(下品な天才)、美人凄腕私立探偵(これ又、格好よすぎ)、ユダヤ人学者(お父さん、涙)、まるごとの樹を宇宙船にしてそれを操縦する修道士の船長(アジア人だそうです)と、我らが領事殿が、夜毎、夕食の後の団らんでお話会。当然、戦も冒険も恋物語も歴史物もでてきます。この様々な物語と、ハイペリオンの戦争間際の混乱道中を楽しんで、この一編は終わってしまいます。


最後のシーンは、皆で手をつないで「オズの魔法使い」を歌いながら、<時間の墓標>へと歩みを進めるご一行。これは、即、次の「ハイペリオンの没落」を手に取らねば。