南の猫の新西蘭雑記

日本も結構好きなのですが、根っこがこっちに深いです。

「エンディミオンの覚醒」 大傑作長編シリーズの第四部、最終編

エンディミオンの覚醒〈上〉 (ハヤカワ文庫SF) エンディミオンの覚醒〈下〉 (ハヤカワ文庫SF) Rise of Endymion (Hyperion Cantos)
いよいよ、大詰め。
最初の章は、教皇陛下崩御。場所は、敵本拠地、パケムという惑星のヴァチカン宮殿。消滅してしまった地球から、移動された由緒正しき宮殿から、世界中にニュースが広がります。とはいえ、復活を約束されたこの世界の話。ニュースに応じる人々の関心は、この崩御された人物が復活後、又、教皇に選ばれるか否か、の、方に集まります。まさに神権政治の極限ともいえる絶大な権力を誇る教会を中心に、様々な勢力が、胸に一物も二物も秘めて、暗躍します。

我らがヒーロー、ロールは前編で命からがらたどりついた亡命先<砂漠のキャンプ>で、偏屈な建築家のもと、四年間の安らかな見習い生活を送っていました。と、いうよりは、建築家に弟子入りした女の子のお供で、雑用係生活と言った方が正しいかな。物語は、又、彼の独房から綴られる文章という形で進みます。教皇の死とともに、<砂漠のキャンプ>も、解体され、まず、ロールの一人旅が始まります。彼の任務は前回の逃避行で傷ついた宇宙船を回収する事。前編の逃避行でも、星から星へと異世界の風物詩をたっぷりと楽しませてもらえますが、ここでも期待は裏切られません。まるで、作者が本当に目にして来たかのような描写には、舌を巻くばかり。

感激の再会を楽しむ間もあればこそ(実はあるんですが。ここから一挙にロマンス満開。)、又、あの「ターミネーター3」より恐ろしい刺客が今度は四人になって、追いかけてきます。外宇宙では再び、戦争。再び、牙をむき出し襲いかかる<コア>の、ロール一行への、教会の支配を拒む異教徒世界への、圧倒的な攻撃。絶望的な逃避行の末は、敵本拠地、ヴァチカン宮殿への特攻。ここで、ロールの独房生活の発端が明かされます。

こうして、書いてみると、とても、暗い話ですね。こんなに恐ろしいアンパッピーエンドの物語はそうそうないと思います。自分の死に様を生まれる前から知っていたら、それがどんなに惨い物だかも知らされていたら、どんな生き方ができるでしょう。

「殉教なんて大きらいだ。宿命なんて大きらいだ。アンパッピーエンドのラブストーリーなんて願い下げだ。」

というロールに対して

「わたしもよ。」

と答える女の子。そして、死地におもむき最後の言葉。

辛いながらも、何度も読み返してしまうのは、結局、ここまでの、そして、ここからの、二人のラブストーリーがどうしようもなく、切実に、美しいからだと思います。豪華絢爛のSF小物の、惜しげもなく披露される多々の異世界風景の、味付けもさながら、核になるのは、やっぱり人の思い。ものすごい作家です、ダン・シモンズ