南の猫の新西蘭雑記

日本も結構好きなのですが、根っこがこっちに深いです。

 お国は?

It made C.A.(Chief Administrator) homesick. Homesick? He corrected himself. This was home. Yet in his heart, he knew it was not true. To his children, it would be but not to him.(中略)He was tied to Earth with bonds that might weaken with the years, but would never break.

「A Fall of Moondust (渇きの海)」 by Arthur C. Clarkeより、抜粋(舞台は月)

時々、初心者向け日本語講座をしています。「初めまして」から、始まり、自己紹介と今度は他人の紹介、と、続いて行きます。そこで出て来るフレーズが、

「あなたのお国はどちらですか?」
大抵の日本人は「日本です。」となると思います。日本人の場合、生まれも育ちも日本、果ては血統も純日本人であることが一般的ですので、この答えに全部含まれてしまって簡単です。こちらの生徒さんは、ニュージーランドに始まり、アジア諸国、ヨーロッパ諸国と多様です。ま、いろいろな国の名前を覚えられて、楽しいのですが、

次に来る質問は、「国」という単語が今住んでいる所か、それとも生まれた所か、です。どちらともとれますが、はっきりさせたい場合は、「生まれはイギリスですが、今はニュージーランドです。」くらいに教えておきます。

時々、「ニュージーランド人です。」と答える生徒さんがいます。人種に話題が行くと、又、ややこしくなります。この国出身だけど、両親とも中国人とか、ギリシア人とか、よくある事です。その場合は、「ニュージーランド生まれの中国人です。」しかし、私は半分イギリス半分サモア、とか、四分の一ずつ違う国とか、言いたい人もいます。予定していなかった単語が増えて、教師も生徒も大変。

"Where are you from?"
と、こちらで聞かれると、私は躊躇なく「日本」と答えます。これはどれほど長くこちらにいようと変わらないと思います。ニュージーランド以外の国で聞かれれば、やはり「日本人だけど今はニュージーランドに住んでいます。」くらいになります。「渇きの海」のCAではありませんが、どこにどれだけ住んでいようと日本人であることは変わらないと思います。

「お国は?」の授業をしていたある日、韓国人の男性が「ニュージーランド人です。」と答えました。生まれはと聞くと、韓国、ニュージーランドはまだ二年弱、ようやく市民権を取った所。「韓国人」とか「韓国生まれ」と言った提案は一切拒否され、「ニュージーランド人」で通されました。今までは、韓国人の生徒さん達は皆、韓国という単語はもとより(皆、大体もう知ってますけど)、言い回しは教えれば教えるほど吸収する熱心な態度の人が多かっただけに、とまどいました。絆を断ち切った人なのでしょうか。