南の猫の新西蘭雑記

日本も結構好きなのですが、根っこがこっちに深いです。

 アシモフの科学エッセイ 第六弾

 このエッセイシリーズで初めて、最初から最後まで面白く読めました。今までの五冊は、ありがたい知識ではありますが、読む端から頭をすりぬけていくようなもどかしさがありました。基礎知識の不足と言ってしまえば、それまでです、はい。かなり短めの専門記事に、方程式やら数字が並んだ図表があると、それだけでもうパニックです。インターネットはもちろんなし、天文写真だってそうそうには手に入らなかった時代の本ですから、生粋の天文少年少女たちは各惑星の太陽からの距離を比べた表を眺めて胸が躍る思いをしていたのでしょうが。最新の火星表面の写真が、台所のはしっこに鎮座している小さなノートパソコンに即座に送られてくるありがたい時勢となった今、太陽系の惑星の位置関係などもフルカラーの天体三次元図として眺めることができます。数値を変換しなくてもすむようになって、ますます数学音痴が高じるばかりとなげくか、数学音痴でも実感できてありがたいと喜ぶかは、その人しだい。

 話がずれました。

 この六冊目が楽しく読めたのは、一つ一つの章が長めで、ていねいにゆっくりと説明してあったからだと思います。図表も数式もほとんどなし*1。話は、殺虫剤・生命の起原(無機体から有機体へ)・物質の構造(素粒子のはしり)・太陽系探査・宇宙旅行の五つ。とくに、宇宙旅行の所はびっくりでした。宇宙旅行まことしやかに説明していたこの章は、まだ人間が月面着陸を果たしていたかった時に書かれていたのでした。すごすぎます、アイザック・アジモフ。こういう人をクローンで増やして各家庭に一人相談役としておいておけば、世の中の問題はほとんど解決するのでは、と、思うのはSF読みすぎ妄想狂のひとりごとです。

*1:「数式を一個いれるたびに本の売れ行きが半減すると言われて、結局一つにしぼった」と、ホーキング博士が語っていたような気が……