南の猫の新西蘭雑記

日本も結構好きなのですが、根っこがこっちに深いです。

 "Firefly" こんなSFがみたかった!

Firefly: Complete Series [DVD] [Import]

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 文句なしの第一級品です。はてなさんのキーワードによるように、テレビシリーズは早々に打ち切られて、それまでに積み立てて来たストーリーは宙ぶらりんのまま、DVDの話は終わってしまいます。最初から覚悟はしてみていたのですが、それでもため息が出てしまいます。全く、何を考えているんだ、某テレビ局は!

 それでも、収録されている4枚分のエピソード集は十二分の手応え。主役たちのネジロであるおんぼろ密輸貨物宇宙船は、パイプも電線(?)もむきだしで、船員は四角いアルミパイプのはしごや階段で移動です。皆が集まる食堂は、素朴な木製の大テーブルをまんなかにどっしりと備え、これまた木材の、一個一個サイズもデザインも違う椅子が、その周囲をぐるりととりまきます。この旧新いりまじった摩訶不思議な雰囲気は、訪れる惑星でもたっぷり味合わせてもらえます。エアカーと馬が並んで走ってきたり、宙に浮くシャンデリアの下で、ヴィクトリア調の裾まで丸く脹らんだドレスを来た婦女と燕尾服の紳士が社交ダンスを踊ったり。

 船にもどります。

 メカニックさんは、エンジンの隣にハンモックを吊るして寝ています。このメカニックさんは、ちゃんとした訓練を受けていないにもかかわらず、エンジンと心が通じてしまう奇才ですが、台所の壁に花模様をあしらってみたりする、可憐な女の子です。

 船長は戦争で上部に裏切られ、世の中に絶望した暗い元軍人ではありますが、ねっからの人道主義者で、自分の船員たちを何よりも大事にします。彼の部屋は、貨物室の壁のパネルをカチンとあけて、梯子でおります。部屋の壁のパネルの一枚をひっぱると、トイレ。それを閉じて、その上のパネルをひっぱると洗面器。オリエンタルエクスプレスの方がよっぽど豪華です。

 船のNo. 2は、戦争中から船長の直属の部下、果敢な女戦士さん。黒豹を思わせる、しなやかな身体使いと、眉間を貫かれそうな鋭い視線の持ち主ではありますが、だんなさんと二人っきりになりますと、いきなりくたりと猫になります(これはまるっきりの私の主観)

 操縦士は、操縦は天才だけど、戦闘は奥さんにカバーしてもらう、女戦士さんのだんなさん。船長と女戦士さんの固い主従関係に、たびたびカチンときています。いっそのこと、一回でも夜を伴に過ごしてくれれば、気持ちがふっきれるのに、と、船長にこぼす操縦士。操縦士の気持ちを安定させるために命令する、と、船長。命令となればいたしかたありません、どうか激しく私をお求め下さい、と、女戦士。と、いうエピソードもありましたwww。結果はみてのお楽しみ。

 金と武器と女が好きな単細胞の用心棒。間借り人は、軍の上につながりがあることを匂わせる武器と闇社会に詳しい神父。軍上層部の実験体だった天才少女とその兄の天才医師。娼婦とは呼ばないけど上品に男性のお相手をする訓練を受けて、それを生業とする、コンパニオンと呼ばれる女性。と、住人も九人九色で、あちこちでぶつかって、楽しい花火を打ち上げてくれます。

 そして、まだまだ打ち上げられていない特大花火をかかえながら打ち切られてしまった、このシリーズ。本当に惜しいです。積年の恨みをはらす(?)意味でようやく作られたのが、この映画。

 最初にこれを観たときは、それなりに面白かったけど、細かい所が消化できなくて残念でした。が、テレビシリーズをみた後でしたら、鬼に金棒。又、借りてこなくちゃね、と、主人と意気投合して、Firefly熱は当分冷めそうにありません。