南の猫の新西蘭雑記

日本も結構好きなのですが、根っこがこっちに深いです。

 陪審員の方々、判決を…… その四

 まずは正面入り口から入った広い廊下のまんなかに居座っているガラスの円筒に入っている受付のおばさんに近寄ります。こちらが口を開く前に、
"Jury service? Turn right over there."
と、先手をうたれました。右、右と曲がりますと、細い廊下に人の列。もう、九時十五分をまわっていますが、まだ、大丈夫そう。と、いうことで、ちょっとトイレ休憩。だって、いったん入ったらどうなるかわかりませんから。戻ってみると列は長くなっています。ま、そんなものでしょう。こちらの準備は万端です。iPodをとりだして、たまっているPodCastを聞き始めます。亀の歩みで列はすすみます。狭い廊下を抜けるとそこは……

と、ここで続くにしようと思ったのですが、あまりにもあまりなので続けます。

 あまり広くはない大部屋でした。壁際に木製ベンチが据え付けてありますが、部屋中にびっしりとプラスチックの椅子が並べてあります。もう、八割方埋まっています。前のほうにはコーヒー、お茶の用意。こういうのはまっさきに眼がいきます。そのお茶道具の前を通って、キャスター付き棚の上にのっているテレビの前を通って、ようやくかわいいお兄さんと大きなおじさんが名簿を前に座っている長テーブルにたどりつきます。大きなおじさんはどことなく映画の「ハリー・ポッター」のハグリッド先生を思い起こさせる太いまるまるとした指とふさふさの髭の持ち主。前をゆく人々が皆大事そうに裁判所から郵送された召喚状を持っているのを見ていて、しまったと思っていました。私はまだ壁にはりっぱなしです。さ〜てどうしたものかと、自分の番がきた時にハグリッド先生におそるおそる切り出します。
"I am sorry. I didn't bring the paper. "
(すみません。手紙をもってきていないのですが。)
"That's all right, dear. What's your family name?"
(大丈夫ですよ。名字は?)
"Minamino...M I N A ..."
"Ahh...Minami-no-neko?"
"Yes."
"Thank you, dear. Please take a seat."
 ハグリッド先生はぱらぱらと名簿をめくって、私の名前の横にナイキマークのチェックを入れると、優しく室内の椅子の方を指し示しました。しかし……空いた席がほとんどありません。椅子は、まん中を開けて両側に十席ほど、それが十列以上は並んでいたと思います。10 X 2 X 10で二百人分。それが、こちらにぽつん、あちらにぽつん、と、ちょうど列のまんなかあたりが空いてます。端から詰めるという常識はまるっきりない国です。しかたがないので、一番前の列のハグリッド先生のまんまえの空いた席に座りました。背が低かったので、小学校のころから前に座るのは慣れています(爆。

それではここで……続く……