南の猫の里帰り雑記

29年ぶりに帰国して3年日本にいたけどNZに里帰り

 外国語としての英語

 "English as a second language"というフレーズもすっかり定着したニュージーランドです。英語を母国語として話す人が外国人に英語を教えたい場合は、"Teaching English as a Second Language"というコースがあります。だいたい母国語というのは、文字を頼らず耳と眼と体感で習得したものですから、少々頭が固くなってしまった*1大人が第二言語を習得するのは非常に大変です。大人には忍耐と学習意欲というアドバンテージはありますけど。

 ニュージーランドは移民国ですので、母国語でない英語を話す人はたくさんいます。さまざまなアクセントの英語がとびかいます。同時期に入った明るい東欧人の若女子は、素敵な抑揚のある英語を話します。母国語の他にドイツ語も話せるとかで、あやつれる言語は三ヶ国にまたがります*2
"I just love talking to people. I don't care if they think I speak funny English."
「人と話すのが大好きだから。変な英語を話すやつだと思われたって気にしないわ」
 う〜む、名言です。多少訛っていても、それを気にしてもぐもぐを引っ込み思案に話していては、それこそ相手がよけいに困ります。

 ずいぶん緩和されましたが、それでもやはり訛っている英語に対する偏見というのはなくなりません。これはほとんど条件反射で、英語圏の国内でもあるそうです。たとえば、アメリカでオセアニア訛の英語を話す*3と、自動的に知能の劣る人として扱われるとか。すべての人がそうではありません。言葉を聞いたとき、これは違うぞと思ってしまうのは、自然の反応でそうそう変えられるものではありません。私自身も電話の相手が訛のある英語を話すと、身構えてしまいます。これを自覚するのとしないので、大違い。accent = not cleverの無意識変換を無効にして、相手を対等に認識しますと、どれだけものごとがスムーズにすすむことか。

 仕事の電話で"Hello, how can I help you?"と言った途端、"Can I talk to somebody who speaks English?"と言われたことは、一度や、二度ではすみません。なんだか、前にも記事にしたことがあるような気がしますが:

  1. カウンターにて
    • "Hi, do you have a map of CBD?"
    • "CBD, central business district, right?"
    • "Oh, you don't know anything!"と、隣の同僚に向く。
    • 同僚が地図を渡したあとで、私に何をきいたのか聞いてきました。「CBDってcentral business districtですよね〜、と、軽く言ったら、無知な奴だと断定されたんだ」と話したら、「そんな失礼なやつに地図をあげるんじゃなかった。どうして言ってくれなかったの」と同僚。いや、それほどのことでもないんですけど。
  2. 電話 一番安いバー
    • "Hello, can you tell me which bar sells the cheapest XXXX (名前忘れましたが、カクテルの一種)?"
    • "I'm sorry, but we don't keep record of drink prices here. We're travel information centre."
    • "Tourists drink too, right?"
    • "Well, yes. But we only have information for accommodation, transportation and things like that, for travel arrangements."
    • "Can I speak to somebody who speaks English?" (かなりいらついてます)
    • "(お、こうきたか。)I am speaking English. And I am afraid I am on phone duty today, and other staff are busy serving their customers. Is there anything else that I can help you?"
    • がしゃん!(と、いきなりきる)
    • 数分後、また同じ声 "Hi, can I have a list of bars who sells XXXX?"
    • "I am sorry, but, as I said before, we don't have information like that."
    • "Can I speak to somebody else?"
    • "I am afraid they are all with other customers."
    • "Fxxxx Chinese!" がしゃん!
    • (はは、私、中国人ではないのだけど……汚名をきせてしまってすみません。)
  3. 電話 非を認める勇気
    • "Hello, do you know where the pool is with hydro-slide?"
    • "Let me see. Hydro-slide is water-slide thing right?"
    • "OH, you don't know what I"m talking about! Can I speak to somebody who speaks English?"
    • "I am sorry, mum. But I'm on phone duty today. I'll find out where the pool is. Just a moment. Here it is. Does XXXX aquatic centre ring a bell?"
    • "That's it."
    • "The phone no is xxxxxxx. The address is xxxxx."
    • "Thank you so much. And I am sorry about my comment before. Have a nice day."
    • "Oh, no. No problem. Thank you."

 ずいぶん前のことですので、言い回しに多少記憶違いがあるかとは思いますが、こんなこともあったなっぁ、と、いう話。ま、いろいろな人がいます。経験から言いますと、無教養な人ほど偏見の度も強いというあたりまえの結論に結びつきます。でも、訛英語への反応はかなりよくなっています。それだけ、お互い慣れてきて許容力が大きくなってきたのでしょう。

 「お互い」というのが非常に大切だと思います。英語母国語者が自分の話す英語以外の英語に耳をならしてくれるのは非常に嬉しい事です。ですが、我々、外国語としての英語通話者もそれに甘えて精進を怠っては、後退する一方です。

 中国に帰ってしまった、もと同僚のZさんの英語は訛はもちろん、動詞の時制がいつも現在形のかなりあやしいものでした。パートナーも中国人ということで、普段の生活が中国語ではなかなか英語が上達しないのはわかりますが、お客さんに出すEメールが間違いだらけなのに気がついた時には、かなりびっくりしました。仕事の上では先輩である彼女は、こういうときにはこの文章を使うといいのよ、コピーしておきなさい、と、メールをくれます。その文章が、その、なんといいますか……はっきり言って、つかいたくねぇ。と、いきなり言葉まで荒れそうなでき具合。まず、長い。andを何度もつかって四行くらいの長文章。もとの文章が見え隠れするものの、その上に何か自分で変更したのか、どうにもちぐはぐな言い回し。ついでに、過去形も過去分詞もbe動詞もめちゃくちゃ。

 「中国語というのは動詞の時制がない」と香港から来ていた私の日本語生徒さんが教えてくれました。「へ、ではどうやって、昨日したことか、明日することか、わかるの?」と聞くと、必要なときはただ昨日とか明日とか言えばよいだけとか。そうか、では、中国語習得は、あの難解な発音さえのりこえれば動詞は簡単なのかもしれない、と、ちらと不遜なことを考えてしまいました。そういう言語で考える人にとって、日本語動詞はもちろんですが、英語の時制は非常に混乱するものであることは、深く考えなくてもわかります。

 ある日、お客さんから「あなたの英語力には不安を感じますので、おたくの見積もりは使わないことにしました」と、これまた、あまりちゃんとした英語を使わないお客さんからメールをもらってへこんだZさん。ことの起こりは「おまたせして申し訳ありません」のフレーズ。
"Thank you for your patience."
が正解ですが、彼女はいつも
"Thank you for your patient."
と書いていたことが判明。これをお客さんに指摘されて、英中辞典をひいた彼女。
「ねえ、猫。Patientって病人のこと?」
「名詞だったらそうだけど」
「じゃ、patienceは?」
「え〜と、それも名詞で(英語で英語を説明するのは大変なのです。とくにこういった抽象的な言葉は)、たとえば、長い間またされても怒らないこと……」
「これ?」と、辞書を見せてくれる『耐心』
「あ、そうそう、これ。でも、なんで」
「でも、patientもがまんづよいこととも書いてあるけど」
「tの方は、形容詞で、ceで終わるのは名詞だよ」
「形容詞?名詞?」
「名詞は名前の言葉。形容詞は性質をいろいろ形容する言葉」(はは、日本語だと漢字のままですね。英語だとnounはname word、adjectiveはdescribing wordとなります)
「じゃ、これ、やっぱり間違っているの?」
と、ここで自分のメールを見せてくれました。内心かなりずっこけましたが、真面目な顔をたもって、
「そうね、でも、これはまちがえやすいのよ」
慰めながら、それから続く相変わらずの長文を読んでいて、冷や汗がでてきました。私自身も完璧な英文を書く自信はありませんが、その私にさえわかる間違いがぼろぼろと……とにかくandの濫用。動詞の時制がことごとく違う。うひゃ〜、これじゃ、よくわかりませんがな。

 ニュージーランドに二、三年というのならまだわかりますが、彼女は実はもう九年ここに住んでます。四年制の大学でツーリズムの単位ももらっています。
「英語は全然自信ないの。大学の卒業論文も外国人だからと文法は無視してもらったみたい。でなければ、きっと落第していたわ」
あっけらかんと言います。あなたね〜。さすがに今回のお客さんのコメントはこたえたらしく(仕事意欲は人二倍で、敏速と効率に命をかけている)時々英文チェックの依頼がくるようになりました。動詞の時制がまるで把握できていないので、説明に汗だくです。とくに現在分詞、過去分詞はねぇ。私もまだ、いまいち不安なときもあるし。あまりにいちいち直されるので当人の自覚も深まったらしく、英語のコースを受けようかなと言いだしたのですが……いきなり帰国してしまいました。中国で英語を教えられるかな〜といいながら。あ〜あ。教える前にもうちょっと教えてもらってね……

 と、いろいろな人が、いろいろな英語、および、英語もどきを話しているニュージーランドであります。現地人に
"Thank you for your patience. Please do not be a patient at a hospital from the stress we're causing."

*1:言語特有の音というものはかなり幼少時に脳にプログラミングしないと、後ではかなり困難だそうです。不可能というわけではないけど、言葉の習得というのは早ければ早いほど楽だという話。裏をかえせば、大人になってから母国語以外の言語をマスターしたひとは、偉大な努力家という勲章が頭上に輝いているわけです。

*2:もっとあるかもしれない。

*3:英語に限らず、方言もそうですよね。標準語と大阪弁の亀裂とか。