南の猫の新西蘭雑記

日本も結構好きなのですが、根っこがこっちに深いです。

 一人で仏滅日、朝の部

 朝、車のイグニションを回しますと、すかっ。もう一度。すかっ。^^; 午前様でがんばって仕事をしている主人におきだしてもらって、ジャンプスタートしました。前にもありました*1が、走り出してしまえば大丈夫だったので、そのままいってきます。主人と子供たちに手をふって、さて音、音、と、カーステレオを見ますと表示が消えてます。おや?車をスタートさせる時に、主人がスイッチをきったのかしらん?とボタンをいろいろいじりますが、不気味に暗い表示画面。だいたいパワーのスイッチなんてどこにあったっけ?ということで、さびしく音無しの朝のドライブを覚悟して、渋滞の高速道路をのろのろと進んでおりました。
 ブレーキ、アクセル、ブレーキ、アクセルとかたつむりの歩みをしているうちになんだか変な感じ。しゅわっ。エンジンがとまってしまいました。一番まんなかよりの車線です。ギヤをニュートラルにして、惰性ですすみながら、何度も鍵を回しますが、かちかちかちと、なんとも頼りない音がかすかに聞こえるだけで、何の反応もないエンジン部。しかたがないので、ハザードランプをぴかぴかさせながら、中央分離壁にぎりぎりまで寄って、立ち往生となりました。小さい車ですので、同じ車線の後続の車はなんとか横を通りぬけていきます。さてさて、と、バッグの中を探しまわりながら、次の嫌な予感。あ、携帯忘れた、^^; 
 こういう時はそのうちにおまわりさんが助けにきてくれるはずです。じっと待つか、外に出て手をふって、止まってくれた親切な人の携帯を借りるか。高速道路で外に出るのはこわいなぁ、と、いうことで、じっとがまんの子をきめこみました。すると、白いミニバンの宅配車がとまってくれました。
「押したげるから、路肩までいきなさい」
「え〜、大丈夫ですか?」
「いいから、いいから」
 と、いうことで、渋滞ののろのろ運転とはいえ車がひっきりなしにやってくるこの高速道路で、私の車をうんとこしょと押して、ついでに片手を上げて隣車線の車をとめて、私の三車線越しをみごとに成し遂げた親切なおじさんは、お礼をいう暇も与えず、さっさと自分の車に戻っていかれてしまいました。後光がさして見えました、m_ _m。
 路肩でハンドブレーキを思いっきりひいて、一安心。しばらくしてお待ちかねの赤と青のランプを点滅させながら白バイがやってまいりました。
「どうしましたか?故障ですか?」
 英国訛りのおにいさんおまわりさんです。かわい。
「はい、エンジンがとまってしまいました」
「携帯は?」
「忘れてきてしまいました」
「AA*2のメンバーですか?」
「はい」
「では、わたしがAAを呼んであげましょう。カードをお出しなさい」
 オートバイに戻ってぼそぼそとした後、
「40分くらいでくるそうです。助手席の方が安全ですから、そちらに座って待っていなさい」
「あの〜、会社に連絡するようにうちに連絡してはいただけませんか?」
「いいですよ、電話番号は?」
 メモに私の電話番号とメモを書き付けて、もう一度オートバイにもどって、ぼそぼそ。
「連絡つきましたよ。ほかには?」
「いえ、お世話さまです。もう大丈夫だと思います」
 さっそうと白バイのまたがり、今度は赤と青のランプは点滅させずに走り去っていった英国訛りのおにいさんおまわりさんでした。かわい。
 では、40分くつろぎましょうと、愛用のiPodのイヤフォーンを耳にさしこみ、待つこと……40分はかからなかったと思います。眼をつむっていたので、後ろについた車に気がつきませんでした。こんこんと窓を叩かれて眼をあけますと、白髪を品よくかりこんだ口ひげとあごひげをたくわえた、壮年のおじさまがにっこり笑っています。あ〜、なんて素敵なながめ。
「どうしました?」
「エンジンがとまって、動きません」
「はい、ではそこのレバーをひいて」
「は、これですか?」
「そう、それ」
 あ、ボンネットをあけるの、ここだったのね……^^; おフランスからきた老貴婦人プジョーなどにのってますので、普通の車と所々使用かってが違います。もう何年ものっているのですが、ボンネットを開けるレバーの位置をいつも忘れます。
 おやおや、と、いうことで、まずはまっしろに錆びついたバッテリーのプラグをこんこんざぶざぶとお掃除してくれたおじさま。
「接続が非常に悪かったみたいですね」
「そうですか?」
 携帯バッテリー(かな?)を繋げてエンジンをかけますと、頼もしいぶるんという音とともに、いつものけたたましいエンジン音が甦りました。おお、これでとりあえずは仕事場まではいけるかしら、と、期待がもりあがります。おじさまは、携帯バッテリー(かな?)をはずして、もう一度エンジンをかけなおします。すかっ。orz 携帯バッテリーさま、再び。ぶるん、がごがごがご。熟練した目つきでボンネットの下を眺め渡していたおじさまは、ある丸い装置をペンチでこんこんと叩きました。騒音がもうひとつ、加わりました。
「オルタネーターがとまっていたので、バッテリーに全然蓄電されていませんでしたよ」
「おるたねーたー?」
「今、叩いたら動き出しましたけど、できるだけ早いうちに交換したほうがいいですよ」
「じゃ、バッテリーは大丈夫なのですか?」
「はい、ほら、今は充電しだしましたよ」
「では、これで市内までは行けますか?」
「今の所、動いてますから、たぶん」
 と、いうことでおるたねーたーのスペルを確認したのち、熟練整備士のおじさまとはしぶしぶお別れ。きっと若い頃から車一筋、定年後も車と縁をきりがたく、こういった仕事をしているのではないでしょうか。いいなぁ、あの年季のこもった無駄のない仕草。で、軽く叩くだけで車が直ってしまう、あの技術(違。これこそ、magic touch(だから、違。と、ほれぼれとしながら、わが老貴婦人を路上復活させました。ふとカーステレオを見ますと、表示が復活しています。バッテリーの飢餓状態は相当なものだったようです。でも、音はもうださずに、とまると困るのでとにかくエンジンふかしぎみで、ようやくいつもの駐車場までたどりつきました。朝の部、おわり。

*1:電気をつけっぱなした時もあったっけ……

*2:Automobile Association 自動車協会、かな?年会費を払っていると、こういった非常時のサポートを含めなんらかの得点を与えてくれる協会。