南の猫の新西蘭雑記

日本も結構好きなのですが、根っこがこっちに深いです。

 乳癌検査 その一 マンモグラフィー (mammography)

 NZでは45才になりますと、無料で検査が受けられます。と、聞いていたので、昨年、思い立って数年振りの健康診断をしてもらったお医者さんに聞いてみました。
「無料検査は病院ですか?」
「そうですね」
「では、最初にこちらで紹介書を書いていただかないとなりませんか」
「そうですね、こちらにまずお越し下さい」
 つまり、検査は無料でも、まずはお医者さんの診察料がいるのですね、と、二の舞をふんでいました。
 ある朝、娘を子守りさんの所に送った時に、建物の前に乳癌検査移動車がどでんと駐車されていました。タラップのような階段を三段あがりますと、すぐに受付のカウンターです。受付のおねえさんのほかは誰もいません。
「検査を受けるのにはやはりお医者さんからの紹介状が必要ですか?」
「いいえ」(おや、医者ということが違う……)
「45才なのですが、無料なのですか?」
「はい、そうです。一応確認しますので、お名前を」
 かたかたと名前を入力しますと、生年月日、住所などが表示されたようです。NZではNHI (National Health Index) Numberというものをもらいます。この番号で個々人の確認が迅速にできます。
「では、すぐにできますか?」
「予約になります」(あ、その場では無理なのね……誰もいないけど……)
 一週間後に予約をいれてもらって、その日は下車しました。

 一週間後、ちょっと遅れて車につきました。先日とちがってかなりいかついおばさんが受付に座ってます。
「すみません、ちょっと遅れました」
「あら〜、書き込む書類があるから、早めにくるようにって言われなかった?」
「聞いておりません(きっぱり)」
「これとこれね」
 一応個人情報とそれからいわゆる承諾書というものにサインをします。何年前か忘れましたが、ある地域の乳癌検査で検出ミスがあり、検出されなかったけど発病した女性たちが、検査機関を相手に裁判をした事件がありました。検査の手順が少々甘かったようで、その上、人員削減という、常套のハンディが重なった、不幸なできごとでした。それのためでしょうか、免責事項などもありました。
 書いていると、もう一人の女性が入ってきました。早目にくるようにと言われたので来ました、と、いうその方の横で気まずい思いをしながら、ペンを走らせます。書き終わって書類を渡しますと、そちらで待っていて下さい、と、なぜか先にかきおわっていた後続の女性の横を指し示されます。前の人が少し時間がかかっているとかで、何となく世間話となります。実はその日が最終日で、次の日に錨をあげて、じゃないけど、階段をしまって北方面へ移動予定とか。後続の女性は一回目は病院だったけど、こういう移動車のサービスがあると助かるわ、と、話します。私も、病院は紹介がないと行けないと聞いていたので、ここがあって助かりました、と、いいますと、カウンターのおばちゃんの眼がきらりと光りました。
「あら、病院だって紹介状なんていらないわよ」
「え、でも医者が……」
「困るのよね。医者たちは自分たちの懐にお金が入らないと困るからそういうのよ。無料サービスを浸透させようと、こちらはもう膨大な宣伝費をかけてテレビで広告して、ショッピングモールでパンフレットを配ってもいるのに」
 どちらもお目にかかったことはありません。ここにぎりぎりセーフでもぐりこめたのはかなり幸運だったと言えそうです。あの医院に少々幻滅したのは言うまでもありません。

つづく