南の猫の新西蘭雑記

日本も結構好きなのですが、根っこがこっちに深いです。

大好きだけど、二度と見られない映画 其の弐 「AI」

A.I. [DVD]

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これは、不意をつかれました。なんといっても、「シックス・センス [DVD]」のハーレイ・ジョエル・オズメント君が主演ですから、よさそうとは思っていたのですが。

子供のアンドロイドのお話。意識不明の重病の子供を持つ両親。母親を慰めたいばかりに、父親は、びっくりプレゼントでアンドロイドを連れてきます。しばし、悩み、様子を見た上で、決心する母親。自分を母親として慕わせるプログラムを起動します。「マム」と慕われて、楽しい生活がもどったのもつかの間。実の子供の奇跡の目覚めに、新たな問題。慕うのがお母さんだけというプログラムが問題ですよね。せめて、家族にしておけば、お兄ちゃんともうまくいったのに。でも、この話では、あくまでお母さんへの慕情。アシモフロボット三原則なんて、何のその。なんでも一番はお母さん、と、僕。お母さんが、人間の子供が好きなら、僕も、と、お兄ちゃんと張り合う。食べられない食事だって、口にしてしまう。あげくの果てには、お兄ちゃんとプールに転落。


解体工場に向かって車を走らせるも、そこまではできない母親。途中の林にアンドロイドを置き去りにします。泣いてすがるアンドロイドに「工場の方角には決して行ってはいけない。」と言い捨て、立ち去る母親。もう、ここで涙が止まらず。どう考えたって、勝手すぎて、許せません。と、私が怒っても仕方がないのですけど。かくして、アンドロイドは、ピノキオばりの「男の子になりたい」の旅を始めます。


元になったのが、ブライアン・オールディスの短編SF小説Supertoys Last All Summer Long: And Other Stories of Future Time」。と、聞くと奇妙に納得してしまう、何とも有機的なアンドロイドたち。「地球の長い午後 (ハヤカワ文庫 SF 224)」に代表されるオールディスのSFはいつも背景が緑豊かに感じます。そして、その緑の合間から垣間見える奇妙きてれつな生物たち。森に隠れていたアンドロイドたちなんて、もう、はまりすぎ。そして、オールディスお得意の珍道中旅物語。って、元の小説は読んでないので、どこまで、話が一致しているのかは、知りませんが。物足りないとおっしゃる方も多い、あの静かな結末。私には大好きなオールディスのイメージと重なって、しんしんと心に染み入って、又、涙でした。


そうそう、もう一つ。脇役の熊さんぬいぐるみロボットが、これまた、限りなく優しくて、かわいいのです。