ぐだぐだとのんびりしていた日曜日の朝、いきなりドアのベルが鳴ります。ピンポーン。緊急事態発生です。
「かあちゃん、みんなはどこ?」
「それがねぇ……
あなた!道のまんなかで
身繕いなんてしないで下さい!」
異次元の底におちて……
途方にくれる子鴨たち。
「ウギャ〜、謎の物体〜」
「異星人に誘拐される〜」
「頭、ふまないで〜」
「く、くるし〜」
「かあちゃ〜ん」
「あ、かあちゃん」
「あ、とおちゃん」
「急いで、急いで!」
「こわかったよぉ」
「こわかったね」
「はいはい、並んで。
番号!」
「1」「2」「3」「4」「5」「6」「7」
「まだ、足りないわ」
走れ、ナンバーエイト!
「はい、道からあがって。
ここで、しっかり羽を乾かして」
「あとの子はまだかしら」
と、くつろいで腰をおちつけてしまったお母さん。まだ、二羽ほど下にいます。怖がって横のパイプに隠れてしまいました。網が届きません。興奮してはしゃぐ息子と娘をなんとかなだめて、おしゃべりをやめさせ、息をひそめて下水のそばにたたずむ鴨救済隊の一行。おかあさん、頼むから呼んでくださいなぁ、と、念じます。中の子鴨たちは一生懸命、声をあげています。ようやく、九羽目……
一目散におかあさんを目指すはいいけど、反対側の下水溝にまっしぐら。慌てた主人が後をおいましたが、間一髪で進路変更。ことなきを得ました。そして、最後の警戒心の一番強い、賢いけど、はた迷惑な一羽。
鴨救済隊、これにて、任務完遂。もう、落ちないでね……