南の猫の新西蘭雑記

日本も結構好きなのですが、根っこがこっちに深いです。

 "The Female Brain" 現代女性の聖書となりえるか

"Honey, I know how you feel."

この言葉がだんなさまのコンピュータースクリーンの端にはりつけてあります。著者が疲れていらいらとして仕事から帰ってくると、だんなさまからこの言葉を送られます。この言葉を聞くと、だんなさまがただメモを読んでいるだけとわかっているにもかかわらず、自動的に気分が落ち着くそうです。そして、同業であるだんなさまの助言を素直に聞く心構えができるとか。この言葉なしにいきなり助言*1をもらうと、反発心が先立って全くもっとも至極な助言も頭に入らなくなるのは、学歴職歴ばりばりの精神医学者の著者です。この自動的に気分をおちつかせる魔法の言葉に対応するのが、同情に反応する女性ホルモン。感情回路が発達している女性脳はどうしてもこちら方面への反応がさきだちますので、非常時には落ち着かせるため同情を示すことが大事。理論面先攻の男性脳にしてみれば、現状把握、分析を第一にしたい*2ところですが、そこをぐっと押さえて「気持ちはわかるよ」との一言を最優先して下さい。これで、暴走しそうになっている感情回路*3のレベルが下がり、少々作動操作が違うにしても男性脳に劣る事のない女性脳論理回路が稼働*4しはじめます。と、言ったような話が快活に語られるインタビュー記事。

"#20 Brain Scinece Podcast:

The Female Brain

ここ、Brain Science Podcastで紹介される本はふだんは敷居が高くて手がでないのですが、あまりに楽しいインタビューについつい図書館で借りてきたのがこの本。

The Female Brain

The Female Brain

以下、本からの抜粋。

Hormones can determine what the brain is interested in doing.

いや、本当にこんなにホルモンに左右されているとはしりませんでした。月よりのお使者さまに気分と体調がふりまわされるのは、いやというほど体験しておりますが、こう明確に記してもらうと諦めがつくというもの(爆

If you're aware of the fact that a biological brain state is guiding your impulses, you can choose not to act or to act differently than you might feel compelled. But first we have to learn to recognize how the female brain is genetically structured and shaped by evolution, biology and culture. Without that recognition, biology becomes destiny and we will be helpless in the face of it.

そして、仕組みを理解し、自覚しますと、気分的にずいぶん違います。体調がかわるわけではありませんが、それに対する心構えとか気分の対処体制とか考える余裕がでてきます。

The brain is nothing if not a talented learning machine. Nothing is completely fixed. Biology powerfully affects but does not lock in our reality. We can alter that reality and use our intelligence and determination both to celebrate and when necessary, to change the effects of sex hormones on brain structure, behaving reality, creativity - and destiny.

男女平等思想にさらされてきた世代としては、女性も男性も同じように扱わないといけないような強迫観念にも似た姿勢にとらわれています。でも、基本的に身体と精神を制御する脳からして違うわけですから、身体はもちろん感じ方が違って当然です。特に息子と娘の育ち方を見ていると、なるほど、なるほど、と、頷かざるをえない場面が山ほど。そして、更年期にさしかかっている自分も(爆。しかし、ホルモンに支配されるか、それを土台にうまく飛躍できるかは、自分次第。

Connecting through talking activates the pleasure centers in a girls brain, sharing secrets that have romantic and sexual implications activates those centers even more. We're not talking about a small amount of pleasure. This is huge. It's a major dopamine and oxytocin rush, which is the biggest, fattest neurological reward you can get outside of an orgasm.

女の井戸端会議にはこれほどの効果があるそうです。もちろん、個人差はあります。私はつるむのは苦手。でも、学校の女子トイレできゃぴきゃぴわいわいとしていた女生徒たちは本当にこんなに楽しかったのね、と、いまさら納得*5

 ホルモンがまず、脳の構造を変えるそうです。最初に形成される胎児の脳のひな形は女性。ここに男性ホルモンがどっと押し寄せ、脳を浸しますと、通信部分が縮んで論理的回路部分が大きくなった男性脳のできあがり。女性ホルモンによって促される脳は、男性脳に比べると小さめですが、ひだがたくさん織り込まれて、表面積ではそうかわらない、感情回路、通信回路部分が縮まずに成長した女性脳。そして、成長期に放出される男性ホルモンと女性ホルモンが、それぞれに石器時代に設定された男女の役割のために精神と身体をつくりあげていきます。

 女性精神科の医師である本書の著者は、症例をふんだんにとりいれながら、女性の成長過程における心理状態の変化を明確簡潔に語ってくれます。正直、こんなにやさしく書いてくれているとは思っていなかったので、ちょっと拍子抜けしたくらいです。瞬く間にベストセラー、20数カ国後に訳されるだけのことはあります。女性はもちろん、娘さん、奥さん、お母さんのいらっしゃる殿方(つまりだれでもですね)、お勧めの書です。と、書いた所で、邦訳がみつからなかったりして……orz でも、舌のまらわぬホルモンの名称以外はとても読みやすい英語です。多少、原作本をたしなむ方は、ぜひ、ご一読を。

 そして、今年はMale Brainも刊行予定とか。出たらもちろん読んでみます。

*1:"You know what you should do...."

*2:trouble shooting mode - I want to fix it

*3:"We don't want them to fix it. Just vending it out." mode

*4:I am much more ready to listen.

*5:当然、この傾向は一生続きます。奥様やおかあ様の長電話はこういった訳ですので、大目にみてあげましょう。あ、娘もか……