南の猫の新西蘭雑記

日本も結構好きなのですが、根っこがこっちに深いです。

 「aは名詞につくアクセサリーではない」

日本人の英語 (岩波新書)

日本人の英語 (岩波新書)

英語をはなすとき--ものを書くときも、考えるときも--先行して意味的カテゴリーを決めるのは名詞でなく、aの有無である。そのカテゴリーに適切な名詞が選ばれるのはその次である。もし「つける」で表現すれば、「aに名詞をつける」としかいいようがない。「名詞にaをつける」という考え方は、実際には英語の世界には存在しないからである。

 つまり、何かをみたときに、名詞の前にそれが特別な個体であるかどうかが頭に浮かぶそうです。

猫的例文の試み:バードウォッチング(個体識別編)

  • 木陰で何か動きました。 "Is that a bird?" (鳥かな?)
  • 双眼鏡のピントをあわせます。"That's a bird. Is that the bird?" (鳥だ。おめあての鳥かな?)
  • しげしげと見ます。"That's the bird."(おお、あの鳥だ。)
  • 足環がちらりと見えます。双眼鏡の倍率をあげて足環の番号が見えました(と、いうことにしておきます)。
  • "That's my bird!" (おお、私が足環をつけた鳥だ!)

猫的例文の試み:コートを着た人(女装した男編)

  • "Is that a man?" 男かな?(歩き方が雑だ)と振り向く通行人。
  • "Is that the man?" と、有名女優の秘密の恋人の写真を撮ろうと目論んでいる芸能記者
  • "Is that my man?" あれ、私の彼かしら?と、窓からみている有名女優。

 しつこいですが、やはり "I am a cat." では「我が輩は猫である」には役不足だと思います。せめて "A cat, I am." とか……と、考えたりしますが、まるで見当違いの言い回しだと没にされる可能性も大です。

猫的例文の試み:電気器具

  • Mary took it out from the freezer and put it in her microwave.
  • メアリーはそれを冷蔵庫から出して、電子レンジに入れた。

 日本語ですと、冷凍庫も電子レンジも同格ですが、英語は冷凍庫にはthe、電子レンジにはherがつくのが自然だそうです。なぜかといいますと:

冷凍庫というものはどの家庭にでもあるというふうに意識されるが、電子レンジはまだそこまで普及していない。どの家にでも当然電子レンジがあるという意識は、近い将来にできるかもしれないが、今はまだない。その冷凍庫との意識の違いをherとtheの使い分けで表現する。her microwaveのherの単なる所有関係に対して、the freezerのtheは、the freezer that is the expected part of any home (i.e. that it is normal for any person to have)という意味を与える。

 もう電子レンジもtheの時代になっているとは思います。コンピューターももうtheの資格獲得ですよね。ビデオデッキは過去のものになりつつあり、DVDプレーヤーも瞬く間にtheの座におさまっているような気がします。電気器具でmyと自慢できそうたものと言えば……ああ、大型液晶テレビとか、ネットアクセス付き冷蔵庫とか、自動掃除機とか、おお、看護ロボットもそうですね(違。この本では電話がtheと設定されていますが、携帯電話が普及して普通の電話が珍しくなったら、the cell phoneにmy telephoneと逆行したりするのかな?と、勝手に想像してしまいました。

 たぶん、日本ではあまりある英語の参考書がでているでしょうし、これ一冊で英語がものになるといったような決めてではありませんが、ちょっとむずがゆかった所に届く孫の手をかしてもらったような、微妙に的を得て英語理解を深められる良書です。