クリスパー・キャスナイン・システムとは
特定された標的位置でDNAを切断するツールです。
すでにゲノム編集に革命をもたらした技術ですが、
科学者たちは常に
さらなる可能性を探求しています。
さて、クリスパーで他に何ができるのでしょう。
クリスパー:ゲノム編集とその行方
バクテリアの免疫システムとして発見されて以来、
クリスパー・キャスナインは
ゲノム研究の有力なツールとして改変されてきました。
このシステムは二つの構成要素があります。
DNAを切断するタンパク質、キャスナインと、
この二つの要素が結合して
DNAを特異的に正確に切断できる複合体を形成します。
まず、キャスナインが見つけて結合しなければならないのが、
PAMと呼ばれるゲノムの共通配列です。
PAMと結合すると、
ガイドRNAが二重螺旋の一部を解きます。
このRNAは
特定されたDNAの配列と対応して結合する仕組みになっています。
適合する配列を見つけると、
キャスナインがDNAを切断します。
二つのヌクレアーゼドメインにそれぞれ切り込みを入れ、
二重螺旋を切断します。
細胞は切断箇所を修復しようとしますが、
修復過程においてよくエラーが起こります。
そして思わぬ突然変異を導入することが度々あり、
その遺伝子を無力化します。
クリスパーは
特定の遺伝子をノックアウトできる卓越したツールとなりました。
でもクリスパーができるのは二重螺旋切断だけではありません。
研究者たちの中には、
キャスナインの一つあるいは両方の切断ドメインを非活性化し、
そのタンパク質に新たな酵素を融合した者もいます。
キャスナインはその酵素を
特定のDNA配列の位置まで輸送できます。
例の一つとして、キャスナインと
特定のDNA塩基を突然変異させる脱アミノ酵素と融合させ、
シチジンをチミジンに置換することができました。
このような正確なゲノム編集によって
病気を引き起こす突然変異が
健康なゲノムに置換できるようになりました。
あるいは特定の位置で終止コドンを導入することも。
しかし、ゲノム編集が全てではありません。
遺伝子転写促進にクリスパーが使用できないかと、実験している研究所もあります。
まず、キャスナインを完全に非活性化します。
二重螺旋を切断できないようにするのです。
代わりに転写活性化因子が添加されます。
直接融合するか、ペプチドの鎖を使って。
あるいは、活性化因子が
ガイドRNAの代わりに組み込まれることもあります。
添加された活性化因子は
細胞の転写装置を組み込みます。
RNAポリメラーゼや他の因子を
標的位置に引き入れて、そのゲノムの転写量を増加します。
同じ原理が遺伝子抑制にも応用できます。
キャスナインと融合したKRABドメインが
因子を組み込んで転写を非活性化させます。
因子が実際の障害物となって遺伝子を遮断するのです。
もっと独創的なクリスパーの使用法として
この複合体に蛍光生タンパク質を添付するというものがあります。
特定のDNA配列が
細胞内のどの位置にあるか見えるようにするのです。
これはゲノムの三次元構成の視覚化に役立ちます。
あるいは染色体全体に添付させ、
細胞核の中での位置を追跡したり。
クリスパーはすでにこの分野の研究に大変化をもたらしています。
しかしこうした新しい発想は
今までに達成されてきた革新が
氷山の一角でしかないことを示しています。
クリスパーの可能性は無限です。
次にはどんな応用法が生み出されるのか、
クリスパー革命はまだまだ続くようです。
CRISPR: Gene editing and beyond - YouTube
和訳:南の猫