南の猫の新西蘭雑記

日本も結構好きなのですが、根っこがこっちに深いです。

 エイプリル・フール

今日の雲


「今日、誰が来るかしってる?」
「誰?」
「おばあちゃんがプレゼントもってきてくれるって」
「プレゼントって?」
「何だと思う?」
「えーと?」
「いつも欲しい欲しいっていってたじゃない」
「わかんない」
「ワッカがついてて、白くて、軽くて、棒がついてて……」
「あっ、虫捕り網?」
「そうよ」

という母との会話の後、いつおばあちゃんが来るかと、何度も家の前の通りを見にいった私は小学校の低学年か、幼稚園だったかもしれません。日が暮れ始めて、おばあちゃんどうしたのかしら、大丈夫かしらと何度目かの通りチェックから戻って家に入った私に母は言いました。

「なんだ、まだ、わからないの?今日はエイプリル・フールっていって、嘘をついてもいい日なのよ」
「じゃ、おばあちゃん、来ないの?」
「来ないわよ」
「虫捕り網は?」
「おばあちゃんが来ないなら、プレゼントも来ないでしょ?」

泣き虫だった私は、たぶんここでべそをかいたのではないかと。この会話の後の記憶はないのですが、何となく、後日、虫捕り網を買ってもらったような、もらわなかったような。

もちろん、虫捕り網が来ないのは残念でした。でも、それよりも、嘘をついていい日なんて変な日があることと、普段は嘘をついてはいけませんと言っていた母が澄ました顔をして嘘をつき、嘘を暴露した後もごめんなさいの一言もなかったのが、子供心ながら、悲しいとか悔しいとかではなくて、こんなことが許せるのかしらという胸にずきんとくる感じでこたえました。

そして、しっぺ返しをくらったのは母です。それ以来、今度お客さんが来るのよと言われる度、「本当?今度は本当?」といつまでもしつこく聞き返される羽目になったのですから。

と、くら〜い思い出のある日なので、嘘をつく気にはなれません。嘘のような本当の話は大好きですが。でも、それはいつもやっていることです。

と、書いていた所に、主人が知人Dさんの話をしてくれました。こちらでもご多分に漏れずXboxなるものが発売、完売となりました。Dさんの息子さんJ君(13才)は貸しビデオ屋さんでこのXboxの予約ができ、今日の朝、九時にピックアップ。わくわくしながら、家で箱を開けてみると、それは旧式プレーステーション。仕掛人はお父さんのDさん。予約の事を知った、Dさんは、夕べ、わざわざ貸しビデオ屋さんにおもむき、店員に中身をすりかえるようにと説得したとのこと。

かわいそうな、J君、という私に、ぼくもそう思っけど、Dが帰宅するときをねらって、Jはよく家の塀の後ろに隠れていて、Dをおどかすんだ。だから、あいこだって、と主人。こちらの場合、嘘をつくというよりも、どれだけ上手に相手をかつげるかを競います。仲のよい家族間だったら、これくらいなんともないかも。

結局、時と場合と人柄によるんです。でも、やっぱり、いたいけない*1子供にしかけるなら、すぐにばれる罪のない嘘にしてほしいものです。

*1:当時の私がそうであったかは不明ですが。こういう事は忘れられない神経質な子供であったことは確か。