南の猫の新西蘭雑記

日本も結構好きなのですが、根っこがこっちに深いです。

 息子の質問、会話と翻訳、意訳、エトセトラ その一

"Do you think in English or Japanese?"
 薮から棒に息子に聞かれました。え〜、と、考えたのは日本語かな?会話しているときは、母国語で考えてそれを第二外国語に変換するのではなく、いいたい事を言語化する時点で、どちらにいくかの分かれ道の選択となります。通訳さんとかは別でしょうが、普通に話すときは、頭の中で何か国語も同時に進行している人はいないと思います。日本語教室をしていた頃、まず最初に生徒さんに説明したのが、この事。

 ○を見て、マルと伝えたい場合、○→circle→マルでは会話の場合、時間がかかりすぎます。○を見た時に、マルという言葉を考える時と、circleという言葉を考える時の、使い分けスイッチを頭の中に設置しなければなりません。

"A circle is called 'maru' in Japanese."と、いう教え方では、このスイッチの設置はできませんので、私の授業ではまず実物を見て、日本語の言葉を聞いてもらいます。何度も聞いてもらいます。この聞くという作業もとても大切です。馴染みのない他国語の音は、二十回以上も聞かないとその音を認識できるようになれないそうです。音の入力です。それから、聞き分けにかかります。データの整理です。聞き分けができたら、教師の後について言ってみます。ここでようやく助力付の出力です。最終的にその言葉を自分で口にできるようにします。自力のみの出力。そして、最後に文法その他の理屈をノートに書くという、ファイリング作業を行います。と、教えてもらったのが「第二外国語としての英語教師養成講座」これを日本語用に変換した私用の授業過程は:

  1. 導入
    • ○「マルです」
    • △「サンカクです」
    • □「シカクです」
  2. 聞き分け (yes no question)
    • 「これはマルですか?」「はい、そうです」
    • 「これはシカクですか?」「いいえ、ちがいます」
  3. 新単語挑戦-教師の言葉を聞いて選択 (or question)
    • 「これはマルですか、シカクですか?」「マルです」
  4. 新単語習得-教師の質問から単語を自分で選ぶ (what question)
    • 「これは何ですか?」「マルです」

1の時点で、ホワイトボードには

maru
sankaku --desu
shikaku

2が終わった所で、

Kore-wa -maru -desu-ka? -Hai, soo-desu.
sankaku ⌊Iie, chigai-masu.
⌊shikaku

3が終わった所で、

Kore-wa -maru -desu-ka? -sankaku- desu-ka? Maru -desu.
  sankaku ⌊shikaku⌋   Sankaku
  ⌊shikaku ⌊maru -⌋   Shikaku

4が終わった所で、

Kore-wa nan-desu-ka? -Maru -desu.
  Sankaku
  ⌊Shikaku

と、書き加えていきますが、生徒さんには書かせません。今度は生徒さんどうしで、質問、解答の練習をしてもらいます。新たな単語も含めて、会話をしばらく練習したところで、着席して、ようやくペンを取らせます。

 ○を見て「マル」と文字を頼らずに口で伝える練習を、一番にします。文字はあくまで最後の詰めです。"This is a circle. In Japanese, we say, 'kore-wa maru-desu'"式の授業に慣れ切っている生徒さんたちには、初めは不評です。いちいちノートを見ていては会話になりませんからね〜、と、なだめつつ、最低、見るのはホワイトボードだけにしてもらって、ひたすら聞いて話してもらいます。二、三週間もすると、慣れてきます。天才的にものすごい勢いで外国語を習得できる幸運な人もいますが、大半の人は何年も努力しなければ、ある程度話せるようにはなれません。数週間の私の初心者講座でカバーできる範囲など知れたものです。大切なのは知らない単語にでくわしても、焦らず聞き取って意味を推察するか、その単語を聞き返す、実力と度胸を培うこと、だと、思ってます。

 英語習得も同じです。話された英語はそのまま英語で受け止めましょう。わからない場合は英語の質問を考えてみましょう。で、質問の考え方ですが、時間がなくなりました。翻訳、意訳部門も含めて続きはのちほど。